横浜建築都市学

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建築講座2レポート「空間の力」

テーマ:「2008年度建築講座:空間の力」
日時:2008年5月30日(金)18:00〜20:30
講師:東浩紀 会場:横浜市開港記念会館
講堂 主催:Y-GSA+横浜市

大きなよく通る声と、次から次へと息継ぐ間も惜しいかのように流れ出る言葉の波。講演が始まった途端、会場全体は東氏から出るエネルギーに制圧された様だった。現代の情報過多の状態を講演内容と同時に実体験した2時間半を越える講演。会場を出た後、自分の頭がくらくらしたのを覚えている。

今回の講演で東氏は、文化産業の消費分析と情報と社会の対応関係を語り口として、従来の社会の崩壊と新しい社会構造が成熟されていく様子を力強く語った。

 ポストモダンが多様性を肯定したこと。講演の本題はこの歴史的な事件が現代へ与えてきた影響を紐解くことから始まった。まず単純に情報が増え、選択肢として全ての情報が存在をみとめられていく。こうして複雑化した世界の中で翻弄され知能的に限界まで成長しきった近代人は、次第に考えることをある部分で放棄しはじめる。そして自発的に関係し合い管理し合うことで保たれていた従来の社会が変容し始めた。

 「面倒くさい。」この言葉を踏み台にして人は、技術によって社会の安全管理を担保させ始めた。物理的セキュリティーの概念による環境管理型社会、今まで安全で豊かな社会を築くために形成されてきたコミュニティー・地縁が「面倒くさく」なり、崩壊したこれらの穴を技術やセキュリティーが埋めていく。結果、様々な縁が希薄になり、個々人はインターネットなどの媒体を通じて直接世界と接続されてきた。資本や国際化が求めるグローバルスタンダードを前にして、一時的にしろ社会のニーズは世界的に標準化されていくとの見方も出ている。

「まず、現状を認めることが重要だ」

東氏はこの言葉を繰り返した。非常に複雑化した都市。国際化によって独自の文化が消えていくと懸念されるような資本の構造。怠惰な部分を持ってしまった現代人の欲望。負の印象を受けるような問題に対しても東氏の言葉はそれらを否定せず、常に現状として分析する姿勢を保つ。情緒的な部分に流される事もなく、先例に流されない冷静な目がそこにあった。

ハイセキュリティーの高層マンション、ファミリーレストラン、大型ショッピングセンター、コンビニエンスストア、平均的な郊外。私達を含め今の社会がこれらのものを望んでいるのは確かだ。これらに対して建築を考える人間は、何かできる部分があるのではないかと東氏は示唆したように思う。

そして今回、最後の質問で東氏が答えた事が非常に印象的だった。「自分の本当に身近な関係、自分のともだち、その関係も変化すると思いますか?」それは変化を語り時代の流れを語ってくれた東氏に対して、人がもつ普遍的な部分、日常性、自分の本当に身近な問題について尋ねたものだった。環境管理社会となり、現代に言われている血縁家族とは崩壊し批判され解体され、選択的な縁になっていく。そう主張した東氏はこう続けた。「しかし、本当にそうであろうか。」母性、伝統、歴史、実際に誰かと共に住まうある一定の長さを持った時間とその影響力によって生まれる関係性、グローバルな視点の限界。これらについて、現代はまだその解答を本当の意味で作りきれていない。たとえ賃貸のハイセキュリティーマンションであったとしても、そこには時間的に空間の持続力が働く。いくら関係を自由に選択できるといっても一週間に6回引越しするわけにもいかないし、毎日違う人と住むなどということはまずない。隣近所と関係を完全に断絶することはできない。何年かそこに住むうちに、人と人とに関係を与えていく空間と社会が実は少なからず存在するのではないか。東氏は自らの理論の矛盾、空白を最後に議題として提示してくれたように思う。

様々なジレンマや矛盾を巻き込みながら現代社会、現代人に本当に起きている事。今回の講演を通し、その現象に対し建築という分野にいる人間として、冷静な目と未来を構想する力を持って応えていきたいと感じた。
(仁井田百合)

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