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2008年度
総評

総評

田井幹夫(建築家、アーキテクト・カフェ建築設計事務所代表)
都市の骨格を理解すること、そんなあたりまえのことに対して我々はあまりにも無頓着であったことに、学生のみんなは気付かされたはずだ。いや、立派に建築家をやっている多くの日本人だって、そこまで考え抜いて単体の建築に到達している人がどれだけいるだろう。
 バルセロナワークショップの前哨戦として行われた(と僕は認識している)この横浜でのワークショップには、残念ながら最終講評会しか参加できなかった。しかし、新しいストラテジーによって生まれたいくつかのプロジェクトからは、学生たちの新たな建築観への戸惑いと恐れと喜びがごっちゃになり、それがそのまま、まとまらずに吐き出された、荒さそして勢いを感じずにはいられなかった。
 具体的にはツーリズムを根幹に都市を活性化させるべく、数カ所のサイトを選択し、そこに建築をプロジェクトするわけだが、全体の関係があってこその単体という構図は、当然のようでいて、なかなか日頃トレーニングできていない内容だ。何より、バルセロナで成功している都市戦略としてのツーリズムが、有効に都市や建築の文化づくりに貢献できるということに気付かされた功績は大きい。
 各サイトのプロジェックトそのものの是非より、それをつくる必然性なり未来への展望を学生自らの言葉で説明できたというのは、評価に値するだろう。そもそも、都市を語らずに建築など語ることはできない、というのがY-GSA の教育の根幹であるとするなら、まさしくこのワークショップはそれを超インテンシブに行ったものであった。
 学生たちにとっては非常に良いトレーニングになったのは間違いない。しかし、欲を言うならこの西欧的ステレオタイプ的なストラテジーをモノともしない、独自の手法で逃げ切る学生がいても良かったと思うのは少し酷だろうか。


藤原徹平(建築家、隈研吾建築都市設計事務所室長)
横浜という都市は、単純そうでいて、意外ととらえどころがない。色々なキャラクターの界隈が集まった雑多な印象の側面と、港湾を中心としたある程度明快な構造を持った側面とが同時にある。一般的にはどう考えても後者の印象が強い。港町ヨコハマなわけだし。
 カタルーニャ工科大学(UPC)で「Intelligent Coast」というスタジオを企画しているルイス・ファルコン氏は、あたりまえのことだけれど後者の港湾都市・横浜に焦点を当てた。バルセロナや世界中の港湾都市の現在の戦略と経済競争の激しさを、スピーディに紹介し、横浜でシミュレーションしてみせた。超高速の都市リサーチと商業的側面を押さえたグローバルな文脈下での都市戦略提案なのだろうと感じた。
 彼の思想と言葉は、学生には非常に刺激的だったろうと思う。彼らにとっては、初めて出会うリアリズムだからだ。しかし、今、グローバルな投資経済の破綻の中で振り返ると、今はもう少し違う感触がある。

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