2007年度
プロポーザル
エリアマップ
6つのキーワードごとにグループに分かれ、対象敷地を決めてリサーチの実施とプロポーザル作成に取り組んだ。
グループ1 Theme : Public-Private Space
平辻里佳、祖父江一宏、川口周二、遠藤貴昭、Katrin Pfaeffli、Davide Blasi
横浜のウォーターフロントにおけるパブリック・スペースとプライベート・スペースは、一枚の地図上で、色分けで表現することはできない。各スペースは、時間ごとにその要素が交互に入れ替わるといった現象が起きている。例えば、臨港パークや山下公園は、常に誰もが利用することが出来る「24H public space」と定義できるが、ランドマークタワーや赤レンガ倉庫といった公共施設は、深夜には一般人が入ることのできないプライベート・スペースへと変化してしまう・・・といった具合である。
このように時間ごとに各要素が混在している現在の横浜に対して、パブリック・スペースでもあり、またプライベート・スペースでもあるといったような「中間領域=SHA-KO-BA(社交場)」をつくり出していくことが、新たな横浜の未来像になりうると考えた。
そこで、私たちが着目したのは「24H public space」として、日本に広く分布しているコンビニエンスストアである。およそ200 × 200mのグリッド上に配置されたコンビニの都市構造を利用し、横浜のウォーターフロントに「Folly(小屋)」を配置していくことで「SHA-KO-BA」を生み出すことを試みた。「Urban Folly」は都市の中で24時間、誰もが使えるパブリック・スペースである。Follyはフレーム構造とし、場所に合わせてカスタマイズすることができる。私たちは3つのエリアを選び、Follyを配置した。
各エリアはそれぞれの個性を持ち、横浜の過去と現在を表し、そして未来を考える上で象徴的な場となるエリアである。みなとみらいエリアでは、今後開発が予定されている敷地を選び、そこに様々なプログラムを持ったFollyを配置することで、パブリック・スペースを前提とした都市の作り方を提案した。山下公園エリアでは、横浜市が掲げるナショナルアート構想を土台とし、大桟橋と山下埠頭にアーティストのためのスタジオやアトリエ、ギャラリーなどを配置することで、山下公園を含めた周辺一帯をFollyが起点となるアートの街とする提案である。新子安エリアでは、ライブラリーや大学のサテライトに使用できるスタジオなどを配置し、かつての漁村としての運河沿いの賑わいを、教育を主としたパブリック・スペースとすることで甦らせようとする提案である。
グループ2 Theme : Infrastructure-Access "UNFIELD"
青木健、高野健太、Raphael Bollhalder、Rosanna Borsotti
都市中心部にウォーターフロントを抱える横浜の現状として、そのポテンシャルを活かした計画がなされているといえる状況ではない。大きなインナー・ハーバーを形成するウォーターフロントを環状に繋ぐように、道路や鉄道といった交通インフラが整備されつつあるのに対して、内陸部とウォーターフロントを繋ぐ方向のアクセスが充分に整備されておらず、ほんの数百メートル内陸に入ったところに居ても、すぐそこにある海を感じることはできないのである。居住地域は内陸部に集中し、逆にビジネス街や商業地域はウォーターフロントに近い都心部に集中しているが、いずれの地域も「ウォーターフロントに近い」という特徴は活かされてはいない。
私たちの目的は、海へのアクセスを整備し、ウォーターフロントに人々を惹きつけるような、エキサイティングなプログラムを配置することである。まず海へのアクセスを容易いものとするために、現在内陸部に散在する、主要鉄道駅とウォーターフロントを結ぶライン上の道路を拡幅し、さらに歩行空間を整備することでウォーターフロントにダイレクトに接続できるようにする。これにより内陸部から海への視線が抜け、内陸部においても海が見えるようになる。
次に、ユニット・システムを用いることで、ウォーターフロントを再構築する。1ユニットは、インナー・ハーバー全体を構成する水際の各地域から成る。それぞれのユニットは、形状、周辺環境によって、それぞれのキャラクターを持つ。ユニットに文化施設や居住施設などのハードウェア(建築)や、新たなプログラムを加えることで活性化を図る。さまざまなキャラクターをもったS、M、Lサイズのユニットによっていくつかの敷地を部分として再構築し、それが全体としてのXXLサイズのインナー・ハーバーを構成することで、横浜のウォーターフロントをアクティベートする。
グループ3 Theme : Urban Progurams - Functions
矢野剛志、横溝惇、Nicolas Hugentobler、Guillaume Yersin
ワークショップ前半では、横浜の臨海部のいくつかのエリア(関内・みなとみらい21・横浜駅・子安)に対してリサーチを行なった。その結果、これらの地域は横浜の臨海部とは用途混合やスケールなどの点において、異なる特徴を持ったエリアの集合であることが確認できた。しかしそれぞれのエリアは、環境・歴史的要因、またインフラ・ストラクチャーなどによって分断され、互いの関係は希薄なものとなっている。ネックレスに例えるならば、異なる宝石が並んではいるものの、それぞれの宝石をつなぐためのチェーンを欠いた状態である。そのチェーンとなるものを計画し、異なるエリアにネットワークをつくることが必要であると考えた。
我々はその第一段階として、みなとみらい21地区を改善するべきであると考えた。みなとみらい21地区は、横浜駅周辺と関内という、離れて存在する商業地区を繋ぐものとして計画されながらも、二つの商業地区の間に置かれただけの状態となっている。メガ・スケールなブロックで構成された街は、ヒューマンスケールとはかけ離れたものであり、外部空間は閑散としていて余剰のようなものでしかなく、そこに用意されたプログラムはどこにでもある特徴の無いものとなっている。前半のリサーチにおいて様々なエリアでケーススタディを行なった中で、最も用途混合が行なわれており、かつヒューマンスケールに近いと分かった関内地区をモデルとし、そのモデルを適用することで、みなとみらい21地区は、持続可能、用途混合、ヒューマンスケール、新しい雰囲気を獲得することができるのでは ないかと考えた。これはアーバン・ネックレスが北へと展開する第一段階としての提案である。
グループ4 Theme : Characteriestics
松浦荘太、綾城圭、大戸厚史、Simone Cartier、Raphaela Hurschler
グループ4のテーマは「atmosphere(雰囲気)」であった。現在の横浜にはどのようなatmosphereがあり、どのようにしてatmosphereを計画していくべきかが議論された。
中間発表までのリサーチとして、私たちはまずatmosphereがランドマーク、建物や舗装のテクス チャー、植栽などの計6項目から構成されると仮定し、項目ごとに敷地を分析した。その結果、atmosphereと「waiting land(未利用地)」に強い関係性を見つけた。例えば、駐車場のようなatmosphereが低い場所ほど将来性が高く、新たなatmosphereを求めている。そのようなwaiting landの存在が導き出された。
後半の計画では、みなとみらい21地区、新港埠頭、関内の3つの地区に囲まれた、インナー・ハーバーを対象地とした。この地域は、倉庫、遊園地、駐車場など様々な遊休地、暫定利用地が存在する。たくさんのwaiting landが存在する水辺をどのように計画するのか?その方法として、インナー・ハーバーの対岸同士の建築のヴォリュームを揃えるという手法を考えた。建築のヴォリュームが決まれば、その用途も自ずと決まっていく。通常の都市計画では街区ごとに高さ制限、用途地域が定められているのに対し、今回の提案では、対岸の建築高、運河の大きさによって、ヴォリュームを決める。それによりインナー・ハーバーならではのatmosphereが形成されるのではないかと考えた。
atmosphereという非常に曖昧な言葉をテーマに、グループでリサーチ・計画することは決して容易いことではなかった。それぞれがどのように感じるかを何度も議論し、感覚的なことを少しずつ他人と共有していく。このプロセスは、言語の違う海外の学生 との共同作業においては非常に難しいことであったが、同時に得難い経験となった。
グループ5 Theme : scale-grain-mix
百枝優、島田宇啓、李俊鎬、横木真、Lorentz Müller、Chantal Reichenbach
ワークショップの前半では横浜ウォータフロントの中で、横浜駅周辺、みなとみらい、関内という都心部を対象とし、建物、インフラストラクチャー(交通量や利用 人数)などのスケールを調査し、みなとみらい21地区に、より密度の高い都心部を作り出すというヴィジョンを提示した。
現在、これらの3つの地域では、それぞれのスケールが明確に区分されており、各地域のエッジが強く表れている。中間発表では、この明確なエッジを緩やかに繋げるようにスケールを混在させ、かつ、都心部の容積率をさらに高密度化させるという提案をした。これは3つの地域を繋げながら、高密度化を図ることで、一つの強い都心部をつくり出すと同時に、今後開発されていくであろう地域の密度は低く保たせ、横浜のウォータフロント全体が高密度化していくことを防ぐ提案である。
その手法として、みなとみらい21地区に新たな建築のタイポロジーを提案した。現在、みなとみらいは高層ビルと公開空地という単一のタイポロジーで構成されており、人々のアクティビティは建築の中に閉じ込められ、外部空間には人が現れてこない。そこに私たちは、薄く長い、外部空間を仕切っていくような小さなスケール・タイポロジーを持った建築を提案した。特徴を持たない外部空間を建築で仕切っていき、外部空間に性格付けをしていく。外部空間には、森、原っぱ、スポーツ広場などのプログラムが配置される。この新しいタイポロジーを空地のまま残された場所にも適用し、外部空間のゾーニングとしてみなとみらい全体に張り巡らす。強力な都心を形成することで、東京には依存しない、相互補完しあう自立した都市へと成長することを目指したものである。
グループ6 Theme : Increase - Transformation-Innovation "MIX MAX"
田中裕一、川口圭介、欠端朋子、広瀬良太、Piet Nieder、Kathrin Gimmel
中間発表での私たちの提案は、「Water Drive--水辺から都市を計画する」ということをテーマにした。3つのスケールから導き出される、横浜の様々なアイデンティティ(インターナショナリズム・ローカリズム・東京との接続)を水辺からの計画によって一つのメインセンターとして再編しようというものであった。
中間発表以降、私たちはこれまでの大きな都市のスケールを頭に入れながらも、より具体的な場所、よりミクロな視点を持つ必要があった。横浜周辺、関内・山下地区、山手や高島などの既存市街地を繋ぎ合わせる地域となりうる、みなとみらい21地区を計画対象とし、都市機能のマッピング、人口密度、建築のヴォリュームなど、より具体的な構造を読み解いていった。最終的に私たちは、みなとみらい全体に大学というプログラムを与えることで、みなとみらいを含んだ横浜の港湾地区全体を一つのメインセンターとして発展させるというヴィジョンに行き着いた。
行政による都市計画とは別の、既存の都市を評価する新たなレイヤーを提示し、横浜港湾地区という発展途中の都市の未来に新たな方向性を与えていく作業ともいえる。私たちの提案は、アーバンデザインと建築設計の間を繋ぐ新しいレイヤーを提示できたのではないだろうか。