後期 都市講座3レポート「これから向かう先」

テーマ:「新しい都市と空間の構想計画その1―工業地帯と郊外地帯を横浜と千葉の情況から考える」
日時:2007年12月21日(金)18:00〜20:30
講師:北沢 猛(アーバン・デザイナー、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)
司会:鈴木伸治(横浜市立大学国際総合科学部准教授)
会場:横浜市開港記念会館 講堂
主催:Y-GSA+横浜市

あるコンペの審査で、アイディアを実現するための仕組み、主体について提案することができずに負けた。最近、多くの建築家が学生のリアリティのなさを指摘している。素晴しいビジュアルを描けるとしても、社会における現実性、仕組みを持ち合わせていなければダメなのだ。

公共・民間・大学の3者が協力して一つの都市をつくる。単一レイヤーによる従来のマスタープランに代わり、いくつものシナリオが重なる中で都市が更新されていく。それが新しい都市と空間を構想する手法なのだと、北沢氏は丁寧に説明された。

「自分のことを幸せだと思っている人はどのくらいいますか?」と始めに会場に向かって質問された。講演の度にしている質問だそうだが、高い確率で「幸福だ」と答えるブータンの人に比べて、日本人はとても少ない。国民総生産(Gross National Product)ではなく、国民総幸福(Gross National Happiness)の向上を目指した国、都市づくりが存在する。これからの日本が目指すものはGNPではなく、GNHであると北沢氏は主張した。そこに向かう都市構想を「工業地帯と周縁地帯」という、二つの環境での実践を中心に講演は進んだ。

「公共が民間を支える」という構図は高度経済成長の頃にできたものであり、それ以前には京浜工業地帯における浅野総一郎氏の計画のように、インフラを含めて計画して、都市をつくっていく「民間が公共を支える」構図が見られた。
成長を遂げ、日本の重工業を支え、やがて衰退期を迎えた京浜工業地帯の土地のそのほとんどは民間が所有している。5%ほどのわずかな土地しか所有していない行政だけによる再生構想には限界がある。そこで北沢氏は主体となるべき民間と行政に対して、7つのシナリオを用意した。それらのシナリオは固定的なものではなく、順番も決まっていない。動きのあるところから入り込み、次々に着手、更新されていく。それぞれのシナリオがオーバーレイしながら工業地帯が生まれ変わるというストーリーが描かれる。

周縁地帯であるTX(つくばエクスプレス)沿線地域の計画では、北沢氏を中心に、千葉県、柏市、東京大学、千葉大学が協力して「柏の葉国際キャンパスタウン構想」を提案した。「環境・健康・創造・交流の街」をコンセプトにした都市の中心に大学が位置し、公民学連携の新しい都市づくりが行なわれている。市民、行政、NPO、企業、大学が恊働して都市づくりを進めるために、「柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK=Urban Design Center Kashiwa-no-ha)」が設立された。
公共と民間の両者の関係を調整し、都市づくりの提案、シナリオづくりを行なっていく。行政が信頼する民間企業に都市計画を依頼しているニューヨークの例のように、UDCKもまた、戦略的なシンクタンクとして圧倒的なパワー、専門性、デザイン力で都市計画を担う。おそらく現代においては「民間と公共が支え合う」関係が求められており、両者を繋ぐ中心にUDCKは位置づけられる。多くの専門性を必要とする都市計画において、それらをまとめて空間的に落とし込む専門家としての建築家、都市計画家が必要なのだと北沢氏は言う。

講演の終盤に、山本理顕先生から、UDCKの代表として北沢氏には対価が支払われるべきだという主張があった。北沢氏はセンター長の任期3年をボランティアで行なっている。
人口減少、高齢化など、縮小化していく社会においての建築家、都市計画家の仕事は変化していくだろう。大きな施設を建設する機会は減っていき、固定化したマスタープランでは都市の変化に遅れをとる中で、求められることは何なのだろうか。UDCKのような新しい場に対して社会的認知が向上すれば、従来の建築、都市計画の枠を飛び越えたところに新しい活躍の場が広がっていく。新しい建築家、都市計画家の職能と共に、新しい都市がつくられるかもしれない。
北沢氏に応答して、飯田先生がY-GSAがUDCKのような役割を担う必要性について発言された。敷地を飛び越えて建築を計画する、建築と同時に都市をかたちづくる、計画の実現性を高める仕組みづくりにも取り組んでいく。そうした教育を行なうY-GSAが民間、行政と共に都市を計画していく。開校1年目の終わりに、これから向かうべき目標が確かに提示された。

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