テーマ:「2007年度都市講座総括:都市の未来」
日時:2008年1月25日(金)18:00〜20:30
講師:小林重敬(横浜国立大学大学院工学研究院教授)
北沢 猛(アーバン・デザイナー、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)
鈴木伸治(横浜市立大学国際総合学部准教授)
国吉直行(アーバン・デザイナー、横浜市都市整備局都市デザイン室)
会場:横浜市開港記念会館 講堂
主催:Y-GSA+横浜市
今年からY-GSAが始まり、「横浜建築都市学」という市民にも開かれた公開講座が行なわれ、今回はその都市講座シリーズの総括であったが、単に1年間の内容をまとめるのではなく、何か我々に対するメッセージを残していったような講演であった。
まず、鈴木先生からこの1年間にどのような講演があったかを、各講演ごとにキーワードを挙げながら総括していただいた。「現代における水辺都市」「アート」「地球規模での経済」「工業地帯の転換」「土木」「コンパクトシティ」「持続性を持つタイポロジー」。これらのキーワードを見てみると、自然と横浜に結びつき、横浜は幸福なのか、あるいは不幸なのか、とにかく考えていくべきことの多い都市なのだと思えた。
日本は島国のため、海沿いに主要な都市が発達したことは不思議なことではなく、横浜の持つモチベーションからしてみると、これらのキーワードを予測していたかのように都市がつくられてきたことがわかる。しかし予測はしたものの、今後どうしていくのかがはっきりとしない。特に埋め立てやマスタープランといった都市の地形となる構想は半世紀前になされ、みなとみらい21地区(MM21)や関内、京浜工業地帯といった集約的な機能空間はつくられたが、そこにどのような都市的な建築空間つくっていくのか、どのように運営していくのかがわからず、戸惑いながら都市の歴史は進んでいる。
講演の中盤からは、国吉先生、小林先生、北沢先生からそれぞれが関わる具体的な活動であったり、都市に対する提案に基づいたメッセージを送ってくださった。また、後半でのディスカッションでもそうだったが、やはり共通して、都市における共有空間の質をどのように高めていくか、そのためには横浜都心部、またその周辺部におけるローカリゼーション、つまりそれぞれの地域性をどのように空間として展開し、さらに外に対して開いていくのかが問われる、というお話だった。
外に対して開くというのも様々だが、小林先生がおっしゃっていた横浜駅周辺部を例えに挙げると、海側への開き方として、駅空間と海との間にあるビルディング地帯を、もっと海の見える開放的な空間にすることで、今の横浜駅東口は横浜の玄関口として捉えることができる。そこからMM21であったり、遠くは東京湾や京浜工業地帯とも連携が取れるのかもしれない。すると、MM21も東と西で機能的に分けることができ、二つを繋ぐ新しい軸が南北へと伸び、今度はその軸が旧東横線を貫き、南にある戸部地区との繋がりができる。繋がりができることで、戸部地区でも何か新しい機能や活動が見られるかもしれない・・・など、地域を開くということは単にその場所の話だけをしているのではなく、都市全体にまで話が広がり、何か全体像まで見えてくるようなことである。一つの地域を考えるということは、全体を考えることでもあるのだ、というメッセージだった。
北沢先生のお話の中では、「社会的包容」というキーワードが強烈に印象に残った。今まで構想されてきた横浜都心部、つまり関内・MM21・横浜駅周辺という横軸に対して、今後は縦軸はどうだ、という議論がなされるという。要は、MM21に対する戸部地区であったり、関内に対する関外であったり、横浜駅東口に対する西口であったりと、今まで評価されなかった内陸部をこれからは「社会的包容」として逆に引き出していく。つまり、海側だけではつくれなかった集約的機能空間を補うための地域として、縦軸における内陸部の新しい機能と既存とを共にドライブさせることで、横浜の全体が見えてくる。
例えば、新港埠頭でのインターナショナルなイベントや展覧会の開催により大きな公共性がつくられるとしたら、JR線から新港埠頭へと繋がる馬車道や北仲地区に、小さな劇場ホールや音楽・アートで溢れるストリートといった小規模多機能空間がつくられ、その軸はイセザキモールへと繋がり、今度はアーティストの生活が溢れ出す住空間やスタジオがバックアップされ、多種多様な住宅街へと発展し、住民の生活の中に公共空間が身近にあるというような、相互依存的な都市構造ができてくる。やはり都市は点で見るのではなく、線や面といった幾何学的な視点が必要だと思えた。
このように、総括と言えども横浜に対するメッセージが込められた講演であったが、それは上記のように横浜は都市を考える上で幸運にも色々な条件や環境に恵まれていること、またこの講義の論題自体が、建築と都市を同時に考えることを求めている、ということが大きく反映する。そういう意味では色々な人が関心を持ち、共に考えていく公的な場が「横浜建築都市学」という名のもとに実際に横浜で行なわれているということも、ただ建築を設計だけしてれば良いのではなく、実際に都市に出て、話して、聴いて、触れて、考えるといった五感をフルに使っていかなければいけないということを、この学校は教えてくれているのかもしれない。