Y-GSA Yokohama Graduate School of Architecture

乾久美子スタジオ

新しい部分と全体

乾スタジオでは、現代の社会や都市空間にふさわしい「部分と全体」とはなにかを考えてみたいと思う。なぜなら、時代がどう変化しようとも、部分と全体をいかに結びつけるかは、建築家にとっての重要なテーマだからである。

以前別の大学の研究室で、「小さな風景からの学び」というリサーチを行った。窓辺やベンチなど、ごく当たり前の建築的要素だけでなく、地域住民のたまり場所になっている土手(つまりは土木的なもの)や、几帳面に整理されているために地域の顔になっているようなゴミ捨て場(つまりはプログラム的なもの)など、人の活動がみえてくるような場所を徹底的に調査したのだが、それら小さな風景の中には、生成のプロセスがあまりにも繊細で偶発的だからか、その特性を抽象化することが難しいものも多くあった。つまり、「小さな風景」として他から区別化しづらいある種の生々しさを持っていたわけだが、そうしたものに強い現代性を感じるのは私だけではないだろう。そうした生々しく繊細な「部分」ですらも寛容に受け入れることのできるあたらしい「全体」の成立を目指すことを、現代に生きる建築家は試してみるべきではないかと考える。

こうした観点から、乾スタジオでは、まず、「部分と全体」を意識的に追求したオランダ構造主義や、それに続く建築家たちのトライアルを振り返ることから始めたい。また、生態学などをひもといて自然の構造の単純さと複雑さについて研究する。広範囲のリサーチを通して、新しい「部分と全体」の関係を一緒に考えていきたい。

乾久美子プロフィール

乾久美子の写真

1969年大阪府生まれ。
1992年東京藝術大学美術学部建築科卒業。
1996年イエール大学大学院建築学部修了。
1996年より青木淳建築計画事務所入所。
2000年より乾久美子建築設計事務所設立
2011-2016年3月東京藝術大学美術学部建築科准教授。
2016年横浜国立大学大学院Y-GSA教授
2004年「DIOR GINZA」、2008年「アパートメントI」(新建築賞)、2009年「フラワーショップH」(グッドデザイン金賞、JIA新人賞、BCS賞)、2012年「共愛学園前橋国際大学4号館Kyoai Commons共愛コモンズ」(2015年建築学会作品選奨)、2015年「七ヶ浜町七ヶ浜中学校」ほか作品多数