May 19, 2010 2:04 AM | Category: 山本

山本です。「地域社会圏経済」

「地域社会圏」はそこでの経済活動と共に考えられるべきである、という土居義武岳さんの指摘(土居さんのブログ)はまったくその通りだと思う。19世紀の、たとえば、ミュルーズは繊維工業を基盤とする一大産業中心地だった。土居さんからは自動車博物館のスライドを見せてもらったけど、繊維工業に限らず、自動車産業や、ストーブや当時の最先端技術の集積された場所だったのである。その産業労働者のための住宅群がミュルーズの住宅群である。日本の「企業城下町」もまた産業と労働者住宅のコンプレックスであった。でも、そこで働く人たちはその企業の賃労働者である。コンプレックスとはいっても、産業と居住とが密接に関係していたわけではない。働く場所は居住地区とはまったく離れた場所にあったわけである。
「地域社会圏」は、もっと小さな単位である。経済活動といっても、小さなお店かも知れないし、コンビニかも知れないし、あるいは小さな農園かも知れない。あるいは小さな商店街、その場所の特性と共に考えられるような経済活動である。経済活動とはいっても、今のグローバリズムとはなんの関係もない、地域社会圏経済である。
経済(economy)というのは元々そういうものだった。オイキア(家族生活)の場所がオイコス(家)である。Oikos-nomos(家政)がEconomyという言葉の語源である。Oikosの内側で家族という関係を支えるための活動が経済だった。それはポリスにおける公的な生活とはなんの関係もなかったのである。それが家族を超えて社会の下部構造そのものの意味になったのは、資本主義社会、産業革命以降である。そしてさらに1970年代からの市場原理主義が「地域社会圏経済」を決定的に解体させてしまった。「地域社会圏経済」などという言葉があるのかないのか知らないけど、地域社会の内側でその「地域社会圏」の人々を対象にする経済圏のことである。
個人的な記憶だけど、1960年代までは、私の周辺の地域社会は何らかの商売をしているひとたちによって構成されていた。私の実家は薬局だったし、隣は靴屋だった。その隣は乾物屋だった。向かいはたばこ屋だった。専用住宅なんてほとんどなかった。町はそうした小規模店舗付き住宅によって構成されていたのである。細々だけど生き生きした「地域社会圏経済」が成り立っていたのである。
そういう過去の状況を復活させるのはもはや無理だと思うけど、でも、その「地域社会圏」の内側で小さな経済圏をつくることは不可能ではないと思う。たとえば地域通貨のような考え方もあるだろうし、その地域通貨を利用して、個々の人たちがサービスを提供するということもあり得る。「経済」というのは元々内側の人たちが内側に向かってサービスすることだったのである。古代ギリシャでは、そのサービスの領域がオイキア(家族)である。(「人間の条件」p54)そのサービスを担ったのは古代ギリシャでは奴隷だった。「社会が勃興し、『家族(オイキア)』あるいは経済行動が公的領域に侵入してくるとともに、家計と、かつては家族の私的領域に関連していたすべての問題が「集団的」関心となったからである。」(p55)
単純にいうと内側の人たちが内側に向かってするサービスのことを経済(家政)といっていた。それが社会全体の問題になっていったのは、家族という関係が極限まで引き延ばされた結果である。というのがアレントの解釈である。「家族の集団が経済的に組織されて、一つの超人間的家族の模写となっているものこそ、私たちが『社会』と呼んでいるものであり、その政治的な組織形態が『国民(国家)』と呼ばれているのである」(p50)こうしたところがアレントのすごいところで経済と家族と社会と国家があっさりこの一言で結びつけられている。そして、経済こそ社会的だと思っている私たちの常識とは真っ向から対立する考え方である。経済は社会的ではあり得ない。あるいは経済を社会的と考えるような、そういう社会は公共性を担うことができない。単に引き延ばされた私的な(家族的な)関係でしかない、といっているのである。これは今の市場原理主義を先取りして批判しているように読める。利潤をあげることが目的化して、それが社会を動かすエンジンになっていると考えるような、今の社会に対する考え方が破綻しつつあるというのも一方の私たちの実感である。この話はまた改めてするけど、話題は「地域社会圏経済」である。
「地域社会圏」はどのように運営されるのか。その運営の費用は誰が負担するのか。その「地域社会圏」は誰が誰のためにつくるのか。「1住宅=1家族」において問われたことがここでも問題になるのである。
「地域社会圏」と一緒にそこでどのような経済活動が可能なのか、それを考えたい。

| Posted: Riken Yamamoto

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